テザリング組手

火を見て森を水

ゲーム三枚おろし~音楽編~

「どんなゲーム音楽コンポーザーが好きですか?」

popotan322000さんに配信中に聞かれ、すんなりと答えることが出来なかった。
音楽コンポーザー単位で、パッと浮かぶものがない。
どうしてだろう?
ゲーム音楽を考える際には、ゲーム体験とゲーム音楽を一緒くたに考えているから。
ゲームを遊ぶ体験、ゲーム音楽、これらは(他の要素ももちろん複合されたうえで)「ありき」の関係だ。
それぞれが互いに手を組んで一個体を構成する。それを分解して考えることは、難易度の高いものであった。
幼少期に音楽との相関関係が強いゲームばかり体験してきたから…。
…そうじゃないゲームなんてあるのか?

だから質問の時点では「○○というゲームの音楽なら大好き(だけど、コンポーザー単位になるとハッキリ言えないかもなあ)」という答えに収まるのが、オチだった。

上記質問に答えられないのは残念だ。悔しいとは言いたくない…。
好きなゲーム音楽を上げていけば、何かしら傾向や趣向が分かってくるのではないか。
じゃあ好きなゲーム音楽って何だろう?
聞いて当時のゲーム体験を追憶できるもの?
上記とは関係なく(ゲーム自体をしていないが)聞いているものもあるよね。
列挙していってみよう。

 

風のクロノア2 ~世界が望んだ忘れもの~

大人数のコンポーザーがいる*1
風のクロノア2は、ゲーム内ステージ環境の変化(ex.屋外⇔洞窟)等に伴って、楽曲が変化する、ゲームと音楽の相互関係性の深い作品です。

ちいさな頃にこの作品を遊んだ経験が、自分のゲーム音楽観の根幹になっていることは言うまでもない。
余談だけど、クロノア2の曲はPat Metheny Groupの音楽をオマージュしていると推測しています。
Pat Metheny Group - Dream of the Return


惜しくも2020年に逝去してしまったLyle Maysの特徴的なシンセ(Overheim?2:39~)が、クロノア2でも特徴的なさわやかなシンセとオーバーラップします。
Going to Lunatea

星のカービィ2

HAL研の安藤浩和さん、池上正さんの共作。
安藤さんは初代スマブラの楽曲に携わったことでも有名ですね。

クラウディパーク ステージ選択BGM

名曲として有名であろうクラウディパークであっても、ステージ選択画面音楽。
カービィ2とカービィ64はステージセレクト画面のBGMがとても良い。
そのステージ・星がどんな雰囲気なのか。
時にはステージBGMと同じ旋律や音色を用いて短く表現されています。

カービィ2以降、管理業務に追われていたらしい池上正さんですが、最新作ディスカバリーにて主題歌の作曲をされたようです。嬉しいお話!

Lovedelic系列のゲーム

Thelonious Monkees

安達昌宜、谷口博史からなる二人組。
ラブデリックに関係するゲームに楽曲だけでなく効果音も、また変名アーティストとしての参加もしている。
彼らの関わっている作品は(大体ラブデリック関係ですが)追っています。
好きなコンポーザーです。

moon - Promise (MD Version)

変名参加例 
チグニータ*2 - ラ・チートイツ

おそうじBGM

めちゃくちゃいいよな。なあ?

エンドネシアに至っては、まだ遊んでないのに曲が好き過ぎて何度も聞いています。
エンドネシアは安達さんワークスみたい?Twitterでの谷口さんからのリプライ情報。

ファンシーゾーン(元気一杯)

どうやら主人公の状態によって音楽も変わる様です。
遊ぶのが楽しみです。

moonの頃から、インタラクティブゲーム音楽にこだわりのある方がいる(バンプール立ち上げた工藤さん)という話を読んだことがある*3

様々な参加アーティスト

moonを端緒に、ラブデリックのゲームには多くの現実のアーティストや、他のゲームコンポーザーの変名ユニットが参加している。
ジャンルも多種多様、プログレからタンゴ、民族音楽の録音まで…。
そんなのがゲーム中に流れてくる。

そんな中でも、ギフトピアに収録されていた、MUMUの役人#4を紹介します。

MUMU - 役人#4


こんなのがゲームしてると流れる。子供は違和感を覚えないで聞きながら遊ぶ…。
MUMUは追いかけてます…がゲームコンポーザーではないね。
最近はまたライブもやってるみたい!やってるうちに見に行くぞ!平日ばっかだが…。

サガシリーズ

河津秋敏

音楽コンポーザーではありませんが、Unlimited: SaGa以降の主題歌の作詞に携わっています。
荒唐無稽なフリーシナリオを越えてきたプレイヤーに飛び込んでくる歌詞の楽曲が多く、ゲーム体験と密接に結びついていると言えます。

河津さんの作品は追っていますが、河津さんというディレクターのゲームを追っているということです。

Romancing SaGa -Minstrel Song-では、アーティスト山崎まさよし氏が作詞作曲を行っていますが、事前に分厚い台本を受け取っていたとのこと*4

天翔ける翼 (作詞: 河津秋敏 作曲: 濱渦正志)


これはしっかりアンサガを全主人公でクリアして聞きたいです…。

胸に刻んで(作詞: 河津秋敏、片岡正博、佐藤弥詠子 作曲: 伊藤賢治)


サガシリーズの中でも随一の淡白さのサガスカですが、最後にこの歌を聞くだけですべて報われます。
是非遊んだうえで受け止めてみてほしい。

伊藤賢治

聞く時のモードが違う気がしますが、どちらも好きなコンポーザーです。

イトケンさんは実は、自称静かな曲が得意なタイプらしいですよ。
豊かなストーリー・リージョンに合わせたバラエティパックとしてサガフロンティアの街の曲は、どれもキャラクターが立っていて好みです。

伊藤賢治 - 九龍


キュートな電子ベースのリフからなだれ込んでくる!

濱渦正志

コンポーザー単位で追ってると言えるのは濱渦さんでしょうか。
サガフロ2で出会い、フリューのレジェンドオブレガシー、アライアンスアライブを遊ぶ一因になっていましたから。

濱渦さんは映像作品を作ったり、アイヌ研究をしていたりもするらしい。幅広くてすごいです。
FF10のピアノアレンジのアルバムがとーっても好きです。

濱渦正志 - ビサイド


黒鍵を主体で作ってらっしゃるのかしら。
ラヴェルやらドビュッシーからの影響とともに紹介されることも多いみたい?

植松伸夫

追ってなくても耳に入るお方。
町などの落ち着いた曲に魅力を感じます。

Final Fantasy 5 - 街のテーマ

Final Fantasy 7 - 旅の途中で


ホントいい曲…。

Final Fantasy 8 - ami


Fisherman’s Horizonと悩みました。

Final Fantasy 9 - 辺境の村 ダリ



余談ですが、植松さんはmoonに「あすなろボーイズ」として楽曲提供をしています。
相方はなんと光田康典さん*5

あすなろボーイズ - くつしたの穴


このアコーディオンが、あのネコ柄の楽器から鳴っている。

Hylics2

Mason Lindroth氏のクレイアニメの変なゲーム。
前作から強化された要素の一つが、Chuck Salamone氏のガレージサイケ。
Mason Lindroth & Chuck Salamone - Them's Fightin' Words


これが通常戦闘曲。アガるっしょ?
ゲームは、イカしたクレイアニメ+実写で、こちらもまた濃ゆい雰囲気を纏っております。

Chuck氏は新譜も出しているようです*6

佐野電磁

Drag-on Dragoonの楽曲を担当した佐野電磁ことsanodgこと佐野信義さん。
ストーリーを読み込むにつれ、楽曲からも狂気じみた雰囲気を煽りたいと画策*7し、たどり着いたのがオーケストラサウンドのサンプリング。*8

佐野電磁 - 第六章 上空


アルバム一枚の動画から、該当時間を抜粋しています。シークバーを動かせばそこここに名曲が!!
第六章上空、本当に素晴らしい曲です!

お名前の信義は、DOD/ニーアシリーズにて刀身が紫から鉄の色にグラデーションする綺麗な日本刀として登場しています。
どれも高名な歌人が才能枯渇して自害するストーリーなんだけど、佐野電磁さんにあまりにも失礼じゃないか?

 

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結び

皆さん、いい曲が沢山知れて、背景まで分かって、嬉しかったでしょう。
どれも良いゲームです!音楽を聴いて気になったら、是非遊んでみてね。

 

この記事の目的は何だったっけ?

 

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実写版『こち亀』の「おしまい」画像に、私がクソコラされています

 

あとがき

ゲームとゲーム音楽コンポーザーについて

好みのゲーム音楽を上げていくと、音楽だけでなく、ゲームも好みであるものばかりであった。
ゲーム音楽の評価は、ゲーム全体の評価と比例して加点される部分が大いに存在する。
上げてきたどれも、加点が無くてもいい曲ばかりなのは間違いない。
だが、更に繰り返し聞くときには、「いい曲を聞く」だけでない要素を求めて聞いていることが多い。
そこに着目して考えると、プレイ済み・楽曲が好みな作品のローテーションに於いて、私はゲーム体験の追想を求めている。
(これは、そもそも、”音楽を聴く”とはどういうことなのか、という話にも発展し得るのだが…)
ストーリー・戦闘・ビジュアル・セリフ、体験してきた、ゲームのすべての要素が、楽曲群の評価を補強する。

だからこそ、ゲームとゲーム楽曲(もしくはゲーム音楽コンポーザー)を分けて考えることは難しい。
ゲーム音楽はゲームに癒着している。
そんな関係の要素を切り分け引っぺがす際には、どうしても肉(ゲーム自体の評価)が引っ付いてくるし、何か(ゲームを遊んだ時の体験・感覚)が零れることは防ぎようがない。
だからこそ、"避けたい"行為なのだろう。

その逆に、良い楽曲の視聴を、よりよいものへと補強するために、ゲームをプレイすることもある。
良い音楽は、新たなゲームの入り口にも成りうることは声高に主張したい。
実際、「曲良いなあ」から入ったゲームも沢山あります。

遊ぶ前から何回も聞いている(いた)楽曲を考えると、濱渦正志さんのFF10ピアノコレクション(をMIDIで演奏したもの)だし、エンドネシア(Thelonious Monkees)だし、戸高一生さんの楽曲だし…。
そういうことを考えると、彼らが私の推しのゲーム楽曲コンポーザーなんだろうね。

 

Fin

 

P.S. コラム ゲーム三枚おろしは今回で終了いたします。

*1:柿埜嘉奈子、境亜寿香、増渕裕二、柴野浩美、椎名豪、田島勝朗、高橋弘太 敬称略
名曲ぞろい・リッジレーサーなんかにも関わっていたり…

皆様ご健在のようで、現在の動向を知るのも面白いです

*2:TANIGUCHIの逆読みだよね…

*3:参照:

伝説のRPG『moon』20年目の同窓会──ラブデリックメンバーが語る、ディレクター3人という奇跡のような開発スタイル…そして「あのころ」の始まりと終わり【座談会】

*4:

山崎まさよし、『ロマサガ』ファンに向けて弾き語り | BARKS

*5:

光田康典 作家20周年記念インタビュー ― 遥かなる時の彼方へ ― [2083WEB]

自作のアコーディオンの話なんかをしています。このブログよりバッチョンバッチョンに面白いので読んでほしい。なんとロマサガ2の閃き💡のSEを作ったのは光田さんだとか…。

*6:

masonlindroth.bandcamp.com

*7:佐野電磁さん自身が書く、自身のWiki。非常に読み応えがある。是非楽曲を聞きながら読んでみてほしい。にしても、東京ニューシティ楽団の方々は自分たちが演奏した楽曲をハナっからサンプリングされて、どういう気持ちだったんだろうか。

www.wikihouse.com

*8:上のWikiにて言及されている、「弦楽のためのファンタジー

なるほどこれは非常にDODサウンドである!こんなにいい曲がエクソシストに使われていたなんて知らなかった。DODを遊んだから、佐野電磁の楽曲が好きだから、この音楽で怖がるなんてことは今後無いか、非常に抑えられることとなった。罪作りだよ!